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【ライナーノーツ】50周年を記念したアルバムが本日発売! 伊勢正三本人によるライナーノーツを公開!!

 

 

50周年記念、レーベルを越えたプロジェクト、スタート!



50周年を記念したニューアルバム「THE 伊勢正三」が本日発売となりました!
伊勢正三本人によるライナーノーツを公開!!

 

THE 伊勢正三

 

*『THE伊勢正三』

 コロナ禍でライブ開催が困難だった中、50周年として、ここまで支えてくれたファンの方々や、伊勢正三の楽曲に関心を向けてくださっている方々に向けて、どうすれば喜んでいただけるかを考えた。
 そこで、伊勢正三初の「オールライブのアルバム」を作ろうと思った。ポイントは、CDにしつらえることが出来るクオリティのライブ「音源」がどれだけ残っているかどうかということだ。

 ちょうど50周年を迎える9月の発売を目指し、3月から具体的な作業に取りかかった。と言っても、この時期…密閉空間の最たるスタジオに、長時間こもって、音源チェックや編集作業に携わる訳にはいかない。
 そこで、まずは1970〜80〜90〜2000年代に渡り、マスターテープが残っているものや、一発録音、記録テープ等など、ありとあらゆる音源の中から音質調整したリストを、スタッフにざっくりと作ってもらった。
 そしてその中から自分で納得のゆくもの、そうでないものを厳選し、選曲をしていったのだ。
 かくしてこのアルバムは、「かぐや姫」「風」「伊勢正三」その都度その都度の時代を目一杯やってきた各時代のライブテイクの全てを、それこそ『THE伊勢正三』ワールドに散りばめたものとなった。

 そうして、最初はまあ3枚組のCDに収められるくらいの曲数が集まれば十分と思っていたコンセプトも、編集作業が進むにつれての嬉しい誤算。4枚組にしてもまだ収まりきれないくらいに膨れ上がったリストを見ながら、あとは、これらの曲をどう並べたらいいのかを悩むことになったのだ。

 そして試行錯誤の結果、その4枚のDISKにそれぞれ「色」をつけて振り分けてみたら、僕の歌の世界がクッキリと伝わるのではないかと考えた。
 まずDISK1は『セピア』の世界。「なごり雪」「置手紙」「22才の別れ」など…、若さと哀しさに溢れたあの頃の曲たちだ。
 DISK2は『コバルトブルー』の世界。「ほんの短い夏」「NEVER」「スモークドガラス越しの景色」など…、都会とリゾートを行ったり来たりするドライブ・イメージの曲たちだ。
 うって変わってDISK3は、『レッド』の世界。「ほおづえをつく女」「B級映画のように」「レミングの街」など、ロックテイストやパッション、艶を表現した曲を散りばめてみた。
 最後のDISK4は、『ゴールド』に光る世界。「海風」「雨の物語」「ささやかなこの人生」など…、自分の音楽人生の標べや、(おこがましいが)金字塔的、もしくはエポックメイキングな存在となった歌たちである。

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 あらためて聴いてみると、それらは当時のままの熱気にあふれたものだった。
1975年の、あの「つま恋」での「かぐや姫」。その中でのデビューしたての「風」の初々しい音源。1977年の「風」武道館。1978年の「かぐや姫」再結成時の追加公演での武道館。1980年の、初めてソロとしての武道館…。

 どうやら僕は、すでに「風」の後期あたりから、意識的にいわゆるフォークからは少しずつ離れた音楽性を追求して来ていたようだ。そしてソロになってからも、僕のミュージシャンとしての探究心は、ますます膨らんでいった。
 その時代の僕は生意気そのもので、コンサートツアーで「22才の別れ」も「なごり雪」もやらないことも度々で…、おそらく会場に足を運んでくれていたファンの大半の期待に背いていたのだろう。若気の至りとは、まさにこのことである。
 しかも、80年代に制作したいくつかのアルバムについては、「ショーヤンは、サウンド志向に迷走してしまった!?」と批評されることすらあった。

 しかしその一方、のちの時代になってからは、「伊勢正三の音楽は、AORのジャンル」と徐々に高く評価されるようになり、「ライトメロウ」シリーズの中では、なんと、その頃の楽曲のみを集めたCDがリリースされたりもしたのだ。何がどうなるのか、わからないものである。

 そして、あの頃からずいぶんの年月が経った。
 今、この50周年のライブアルバムを作るのにあたり、たまたま録音されていた、その「サウンド志向」の頃の演奏をあらためて聴いてみると、少なくとも一つだけ確信できることがある。それは、自分が決してカッコつけで「サウンド志向」に夢中になっていたのではなかったということだ。

 なぜそう言えるかというと、「どうしてもライブでやりたい」という、よほどのエネルギーに満ちていない限り、生演奏でこなすのはとても難しい曲の数々だからだ。ただのカッコつけだけで、ステージでやれるわけがない。
 むしろ、「ヒット曲だからセットリストに入れる」というありきたりの形式だけで過去の曲を演奏していたら、それこそ手抜きになっていただろう。そう思うのは、美意識なのか。一人よがりの自惚れなのか。
 
 ただただ前向きに、その時どれくらい自分が集中していたか。そう自分で感じる今なら、「あの時」「あの会場」に来てくれて、聴きたかった歌を聴けなくてがっかりしたファンの人達に、もう一度今回のこのライブアルバムのテイクを聴いていただき、許して欲しいと思ってやまない。

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 最後に、アルバム制作の上で特にこだわったことを二つだけ説明させてほしい。

 まず一つ目。
 それは、この50周年アルバムのDISK1『セピア』1曲目「あの唄はもう唄わないのですか」を、若いセピア時代の声でのテイクではなく、あえてアルバム中では最晩年のものを収めたということだ。(ちなみにこれは偶然ながら、初めて故郷・津久見市でコンサートをした時のもの)。
 そして、2曲目「22才の別れ」は一転して、最年少の声となる。静岡県掛川市「つま恋」コンサートでのテイクである。そうしてこの物語のようなアルバムがはじまるのだ。
 セピア、コバルトブルー、レッド、ゴールド。全てのDISKを通して聴いたら感じて頂けると思うのだが…、不思議なほど、このように、かなり離れた時代のライブテイクを繋げても違和感がないというのは、今、このアルバムを出すことは間違っていないということだと、(勝手にだが)納得している。

 こだわりの二つ目。
 それは、50周年とはいえ、一昨年リリースした新譜アルバム『Re-born』からは1曲も入れていないということ。それはまだ振り返るものではなく、今の新鮮な自分そのものなので、是非それは単独で聴いて頂きたいと願うからだ。
 ちなみに、あえて近年の新譜を入れていないのにもかかわらず、総数60曲もの内54曲が「未発表音源」であるということも、特筆すべきことかもしれない。


*日本クラウンから同時リリースの「伊勢正三の世界」について。

 往年のヒットメドレー。若く青くほろ苦く、恋と涙で忙しかったあの頃。
歌は、聴いてくれる人の思い出と共にあるという。
そう思えば、あの頃の音源に一切手を加えたりしないでそのまま、それを近年の技術により「リマスター」して、よりいい音で聴いてもらえるのも幸福だ。

 そこで、もう1枚のベストアルバムとして、「かぐや姫」「風」時代、そして、ソロになって初めてのアルバム『北斗七星』の収録曲のマスターテープがある「日本クラウン」(当時のクラウンレコード)から発売してもらうこととなった。

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